
こんにちは、ふー(@dr_fooooo)です。
ぼくは医師(小児科専門医、日本医師会認定産業医)であり、このブログでは主に医療にまつわるお話をしています。
今回は胃腸炎のお話。
胃腸炎の質問は、クリニックや病院で勤務していて、いつもよく聞かれます。
など、吐き気・嘔吐、制吐剤(吐き気止めの薬)について、今回の記事で整理しようと思います。
Contents
急性胃腸炎とは?
こどもたちがよくかかる胃腸炎について。
クリニックなどでわかりやすく「おなかの風邪」とも言われています。
急性胃腸炎とは、前触れ無く腹痛や嘔吐、下痢などが起こる病気で、主に細菌やウイルスに感染することで発症します。
感染源は食事や水、ペットなどいろいろあり、感染経路が不明という場合も少なくないです。
急性胃腸炎については、別途記事にする予定です。
つらい吐き気・嘔吐の症状
胃腸炎でつらい(しんどい)症状は間違いなく「嘔吐」だと思います。
ぼくが胃腸炎にかかった時もしんどいのは嘔吐です。(小児科医は患者からうつされることも多いです。)
吐いてしまうと、もっとも困るのが水分摂取(もちろん食事も摂れない)が十分にできなくなることです。
また、嘔吐はまわりを汚すこともあり、患者本人やお父さん・お母さんの心理的な負担にもなるかと思います。
嘔吐や吐き気を少しでも改善させようと、クリニックや医院、病院では「吐き気止めの薬(制吐剤)」を処方されます。
吐き気止めの薬(制吐剤)って効果あるの?
よく出されるナウゼリンとプリンペラン
まず吐き気止めの種類について簡単に説明したいと思います。
クリニックで処方される吐き気止めの薬(制吐剤)の多くは、
- 「ナウゼリン(ドンペリドン)」
- 「プリンペラン(メトクロプラミド)」
だと思います。
どちらの作用も、ドーパミン受容体に作用し、吐き気を止めるとされています。
ですが!
実は科学的根拠はありません。
なんとなく昔から出されている薬なのです…
しかも、長期の使用は錐体外路症状(手が震えるなど)といった副作用もあるので、できれば使用したくないです。
効く吐き気止めの薬!「ゾフラン(オンダンセトロン)」
ゾフランという薬を聞いたことがありますか?
おそらくほとんどの方がないと思います。
こちらの薬は抗がん剤の吐き気止めで使われています。
抗がん剤って「ゲーゲー吐く」イメージがあるかと思います。
そのイメージを大きく変えた薬の1つです。
ぼくは通常、小児がんの患者さんを治療しているのですが、これを使っていると、抗がん剤の投与や放射線治療を行っても、嘔吐は本当に少ないです。
他にも強力な吐き気止めの薬も使っていたりしますが、がんの患者さんはここ最近本当に嘔吐しないです!
で、このゾフラン(オンダンセトロン)に関しては、胃腸炎に使用した論文があり、効果があるとされています。(PLoS One. 2016 Nov 23;11(11):e0165441.)
でも残念ながら日本では急性胃腸炎に適応がなく使えません!
安全性は確立している(小児がんのこどもには使っている)ので、あとは有効性だけかと思います。
そのうち使えるようになるといいですよね。
製薬会社さん頑張ってください!
効く吐き気止めの薬は使えない。じゃあどうやって対処するの?
胃腸炎の対処方法は以下になります。
水分とミネラル(塩分)と糖をしっかり補充しましょう!
水分の経口摂取が基本的な治療になります。
忘れがちなのが、糖分!
こどもは低血糖になりやすく、糖分の補給が行われないとケトン体という、気持ち悪い成分が溜まっていきます。
お茶やお水を飲ませるのではなく、アクアライトのような水分や糖分、ミネラルを含んだ飲み物を飲ませてあげましょう!
飲ませ方のコツは、少量(スプーン1口)から開始して、5-10分おきに徐々に飲む量を増やすやり方が安全です。
「点滴をしてほしい!」はもしかしたらかわいそうなだけかも!
胃腸炎になった子のお父さん・お母さんから「点滴をしてほしい!」と言われることが時折あります。
点滴に栄養が入っていると考えているお父さん・お母さんが多いためだと思われますが、通常の外来の点滴は、経口補水液と同じ成分でできています。
そのため、ほとんどの胃腸炎は経口補水液で対応可能で、点滴が必要になる子は、ごくわずかです。
点滴は痛みを伴う処置であり、できれば避けてあげたいものなので、医師から提案されない限り(脱水がある場合以外)は、経口補水液を飲ませてあげましょう!
嘔吐物の対処
ウイルス性胃腸炎の一部はアルコール除菌が効かないので、次亜塩素酸が含まれている消毒薬を使用した方が良いです。
ぼくの家は毎年胃腸炎が流行する冬場に向けて、1本購入しています。
まとめ
急性胃腸炎は、こどもにとっても、お父さん・お母さんにとっても大変な病気です。
嘔吐は24〜48時間程度で改善することが多いので、経口補水液を使ってしっかり水分補給をしていきましょう!
点滴は脱水が強い場合(医師から勧められます)のみ行いましょう!
アクアライトは常に家にストックしておくと便利です。
ぼくも常にストックしています。